最高裁判例
事件番号 昭和38(オ)48
事件名 家屋収去土地明渡請求
裁判年月日 昭和39年6月19日

理 由
上告代理人二関敏の上告理由第一点について。
上告人は原審において、本件石油貯蔵庫建築について被上告人は異議を述べなかったのであるから借地法七条の適用があり、従って、用法違反に基づく賃貸借契約の解除は本件の場合許されないとし、なお本件のように消防署の命によりやむなく従前の木造をコンクリートブロック造に改造した場合は右法条の適用のあること疑いないところである旨主張したことは、所論のとおりであるが、原審の認定したところによれば、所論コンクリートブロック造の石油貯蔵庫の建築は特約上も禁じられており、かつ、賃貸人たる被上告人が事前に明白に拒否したことであるにもかかわらず、上告人は、あえて右の如き堅固な工作物を賃借地上に建築してしまったというのであるから、原判決が右の認定事実関係から賃借地の用法違反を判断し、借地法七条の規定に基づく上告人の右主張が採用の限りでない旨を判示したことは、まことに正当というべく、原判決に所論の如き理由不備は存しない。所論は、独自の見解に基づいて原判決の正当な判断を非難するにすぎず採用できない。

同第二点について。
原判決が「本件賃貸借は所論二筆の土地を一括して賃貸借の目的としたものであり、かつ、上告人が本件第一の土地上に所論石油貯蔵庫を建築したのは本件第二の土地及びその地上の事務所その他の建物とともに石油類販売のため右二筆の土地を総合的に利用しようとするにあること」を認定し、この事実に原判示の本件賃貸借の本来の趣旨や被上告人の拒絶にもかかわらず上告人が右石油貯蔵庫を建築したこと等を考えあわせると、右石油貯蔵庫建築による用法違反は本件借地全体に対する解除原因とするに妨げないと判断したことは、原判決挙示の証拠関係に徴し首肯できるところであって、目的物が複数存する場台には、その数だけの契約の存在を認めるべきが経験則に合する旨をいう所論は、独自の見解として採用できない。

同第三点について。
所論は、本件土地賃貸借においてなされた、使用目的を木造二階建住宅及び店舗並びに貯炭場所有と制限し借地内において危険又は衛生上有害若しくは近隣の妨害となるべき事業をしない、との特約は、借地法一一条に照らし、借地権者に不利な契約条件を付したものとして無効と解すべきところ、原審はこれを有効と前提して判断しているのは法令の解釈を誤るものであるというが、右のごとき使用目的等の制限に関する特約をもって所論条規により無効とする見解は、独自のものにすぎず、原審がこれを有効と解したことは正当というべく、所論は採用できない。

なお、所論後段は、本件において上告人が借地上に所論堅固建物を所有したことが賃貸借契約関係の解除原因たるべき信頼関係の破壊にあたるかどうかを云々し、本件のごとく上告人が借地の一少部分に存在する倉庫をコンクリートブロック造りにしたからといって土地賃貸人に何らの不利益も与えない旨を主張し、原判決が被上告人の本件解除権行使を有効と判断した点の誤りを指摘するが、原審認定の事実関係のもとで前示特約による用法違反を原因とする解除を有効とした原判決の判断の正当なことは前述のとおりであって、右所論も、ひっきょう独自の見解を述べるにすぎないものであって採るを得ない。

同第四点について。所論は、本件石油貯蔵庫の建築が所論のごとく消防署の命令によってなされたものであるから、それが表面的に本件賃貸借契約の特約による用法違反にあたるとしても実質的には違法性が阻却されると解すべきところ、原審はこの点について法令適用の誤りをおかし、その違法は判决の結果に影響を及ぼすこと明らかである旨を主張するが、本件借地の約旨に基づく本来の用法は主として貯炭場を設けるためにあって建物としては木造の小規模のものの建築を認めたにすぎないところ、右借地上にコンクリートブロック造の堅固な石油貯蔵庫を建築して石油類を販売するということは、借地の本来の用法に牴触するものであり、かつ原判決認定のように被上告人の事前の明白な拒否にもかかわらずあえてこれを建築したという事情に徴すると、右建築をもって賃貸借における相互信頼関係を害せず用法違反としての違法性を阻却すると断定することは困難であるとした原判決の判断は、首肯できるところであって、所論は、原審認定外の事情をも加えて独自の見解に基づき、右正当な原審判断を非難するにすぎず採用できない。

同第五点について。 原判決が所論指摘の点について被上告人の信義則違反、権利濫用をいう上告人の主張を排斥した判断は、正当として首肯できる。所論は、上告人の営業に欠くべからざるものである限り堅固な施設を置いても差し支えないという黙約が本件契約についてあったとの事実など原審認定にそわない事実を前提とするか、ないしは、独自の見解に基づいて原判決の右正当な判断を論難するにすぎないもので採るを得ない。

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